八月花形歌舞伎 「伊達の十役」
2012-08-11


2012年8月10日 新橋演舞場 午後4時半開演 1階1列

「伊達の十役」

「趣向の華」の昼の部の後、地下鉄で演舞場に行ったら、1、2分遅刻した。海老蔵が、「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)」という言葉の意味を説明して、十役の一人一人を紹介するところだった。

私は早替りが嫌いなので、この演目は最も見たくない部類。最前列で海老蔵の顔だけを楽しめれば良いと思った。

基本的には「伽蘿先代萩」で、それに関連する話が付け加えられている。最初の方はいろいろな役を紹介するように次々に早替りをした。
高尾太夫の話のあたりは眠ってしまって覚えていない。

与右衛門は、海老蔵が亀治郎と「累」でやったときと比べると、良い男でもないし、声がおかまっぽい。
今回は累の役も海老蔵。民部役の愛之助と並んでいるとき、しっかり背を盗んでいて感心した。真面目な役なのだろうが、高い声が間抜けで笑いたくなる。
京潟姫役の笑也がいつも通り綺麗だった。

花水橋以降は、いつも観ている「伽蘿先代萩」と比べて観る楽しみがある。
足利頼兼は、おかまの殿様みたいだった。

政岡は良かった。口を大きく開けると妖怪めくが、いたってマトモ。

八汐は右近。右近の女形が好きなので楽しみにしていたが、八汐が鶴千代にやりこめられる面白いシーンがないのがちょっと残念だった。

千松役の子の声に独特の魅力があり、歌うところから、喉に刀をつきたてられてアーと悲鳴を上げるところまで、この芝居の良いアクセントになっていた。

荒獅子男之助は、ある意味とても海老蔵らしく、力強く派手。最前列だと踏まれているネズミがもがいているところが見えないのが残念だったが、このネズミは早替りの時間を稼ぐため、いつもより活躍する。花道の七三で自分の顔を触ったりして愛嬌を振りまいた後、舞台に戻って立ち回り。最後にすっぽんに飛び込む。

すっぽんから煙が出て、仁木弾正の海老蔵が出てくる。舞台に背を向けた仁木の顔に、3階からライトが当たる。その光の筋に沿って宙を歩いて上っていく仁木。かっこ良いようではあるが、普通の、面明かりで花道を歩いて引っ込むほうが個人的には好み。

細川勝元は華があって良かった。初日に観た知り合いは、この役が一番良かったと言っていたが、確かにそうかもしれない。

仁木と細川が両方とも海老蔵なので、外記と仁木を並べて細川が裁く対決はない。だから仁木が髪の毛を抜いて小細工をするシーンもない。

対決で負けた仁木は外記(市蔵)に、「せめて切腹をお命じください」と執拗に頼む。そして、隙をみて外記を刺す。駆けつける民部(愛之助)たち。仁木は巨大なネズミに変身。大屋根の上のネズミは口から煙を吐く。与右衛門が現れて、古鎌を自分の腹に突き立て、自らの生き血をそそぐと妖術が破られ仁木が現れる。仁木は民部と外記に殺されて大の字に倒れる。そのまま持ち上げて運ばれて行くのはいつも通り。

その後に、また早替りで細川勝元の海老蔵が出てくる。細川勝元のほかにもう一役やるが、そのときは、装置になってる衣装の上から首だけ出してるようで、不自然さがあった。、
[歌舞伎]

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