第4回 趣向の華 8/10昼の部
2012-08-11


2012年8月10日 日本橋劇場 午後1時半開演 1階10列

1時半少し前に会場が暗くなり始めて場内放送が流れた。アレ?亀治郎の声じゃない? と思ったら、しばらくして「市川か・・・猿之助です」。注意事項を言って、「私、猿之助からのお願いです」と締める。「〜は、私は大嫌いでございます」とも。休憩時間にも猿之助の場内放送。ロビーで浴衣を販売しております、という話で、「買ってよー、買ってよー」と女形風に言っているのも聞こえた気がする。

演奏 (上)長唄「雨の五郎」

「雨の五郎」は去年、巡業で何回も聴いた。立三味線が玉太郎。隣りに勘十郎、梅之。鷹之資は太鼓、染五郎、新悟、菊之丞が小鼓。壱太郎が大鼓。笛は女性。唄は本職。大鼓の金属的な乾いた音が好きだ。特に夏は。大鼓の音を中心に聴いた。去年、三味線を弾いたときの染五郎の姿を思い出して、三味線を抱えた姿は鼓より色っぽいものだと思った。

演奏 (下)長唄「連獅子」

唄は勘十郎、隼人、龍之介。「それ青陵山の〜」と勘十郎が歌い、各人がソロで歌う箇所があるので、一人一人が目立つ。
三味線は染五郎、廣太郎、男寅、歌昇、種之助、米吉。いつも暗譜の萬太郎は、「明烏」で主役をやるせいかきょうは出ない。きょうは男寅が暗譜だった。連獅子で客席から拍手が来るところの演奏は廣太郎だった。
お囃子は菊之丞が太鼓、壱太郎が大鼓、梅枝、新悟、梅丸が小鼓。綺麗な若女形が並んでいる。去年は確か新悟がいなくて小鼓は戦力不足だった。獅子が現れるところの演奏に入ると三響会を思い出す。傳次郎みたいな菊之丞。菊之丞の掛け声に、梅枝がしらべを絞るギリギリギリという音が呼応する。梅枝は獅子虎傳に出たときに、鼓の師匠に傳左衛門に、リズムが良いといわれていた。壱太郎が広忠のように咆哮するかと思ったが、それはなかった。

清元「筆幸」

筆幸の一部。勘三郎の筆屋幸兵衛を観たことがある。幸兵衛が狂って船弁慶を踊りだし「桓武天皇九代の後胤」とうたうのを覚えている。その役を勘十郎が浄瑠璃で語る。本職のように上手。娘2人は梅枝と廣松。梅枝はいつもの舞台のようにうまい。廣松は妹役でかわいい声。顔はけっこうごついのに、そのギャップが面白い。もう一人の浄瑠璃は、何でもうまい菊之丞。

「明烏」

落語の「明烏」を菊之丞の脚本、演出で芝居にしたもの。
堅物の息子、時次郎(萬太郎)を心配した父(友右衛門)が、町内の悪2人(梅枝、歌昇)に頼んで息子を吉原に連れて行ってもらう。丁稚の定吉が玉太郎、時次郎を心配する番頭が國矢、遊女屋の女将が新悟、時次郎の相方になる遊女が梅丸。
いつもより遅く帰ってきた時次郎と話す父役の友右衛門が、時々台詞につまって、手にしている台本をめくるのが笑えた。菊之丞がやった方がうまそう。
町内の札付き役の梅枝と歌昇。梅枝は普通にうまい。歌昇は初めから身体を少し折り気味にして、不良の役作り。一度限りでなく、もう少し練れたのが観たかった。堅物の息子役の萬太郎は、あて書きしたようなはまり役。
新悟と梅丸は拵えをしている。花道から出てきた梅丸の遊女と、厠へ行く設定で舞台から花道に行った萬太郎の時次郎が途中で鉢合わせし、時次郎がギャーと悲鳴を上げる。ここがお稲荷さんでなく、廓だと気づいた瞬間。
三人で入ったからには一人で出ることはできないんだと時次郎を騙すのが、この話のキーポイント。そこの台詞を歌昇が言う。時次郎を騙そうとして言ってるんだということをなかなか理解しない梅枝に、「オレの目を見ろ」と言って、梅枝が歌昇に顔をぐっと近づけてにらめっこみたいになったのが面白かった。
結局時次郎は遊女と一夜を共にすることになる。次の朝、一つ布団に寝ている二人の様子を客に見せるために、布団を載せた台をそのまま垂直に立たせたので笑った。
落ちは落語と同じ。悪2人が花道七三に差し掛かったあたりで、時次郎が「帰れるものなら帰ってごらんなさい」と言う。

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[歌舞伎]

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