2010-06-24
2010年6月22日 パルコ劇場 午後7時開演 Y列
朗読劇、という以上の内容をほとんど知らなかった。アンデイーとメリッサが交互に手紙を読み、その一つ一つの内容は必ずしもラブ・レターではないが、50年にわたる手紙のやり取りが一つのラブ・ストーリーを形成する。 原作本は1つで、それを毎回違う男女が朗読する。
アンディー(片岡愛之助)とメリッサ(朝海ひかる)が舞台に出て来て椅子に腰かけ、朗読を始める。アンディはブルージーンズに白いポロシャツ、白地に赤と黒のチェックの短い袖のジャケット、黒地で白い紐のスニーカー。髪型は横分けでコンサーバティブな感じ。メリッサは赤いカーディガン。今風の感じのカーディガンだった。
時の流れも2人の性格も家庭環境も、観客は手紙の内容から判断するしかない。50年にわたる手紙のやり取り、というのも知らなかったので、最初の方は退屈な内容にしか聞こえなくて、2人の世界に入っていけなかった。いたたまれなくなったらどうしようと、少し不安になったほどだ。しかし、手紙の中に連立方程式の話が出て、2人が中学生なんだろうな、と見当がついたあたりから興味を持って聞けるようになった。アンディーは「ですます調」でお堅い感じで、メリッサは自由人の芸術家肌。思春期の男女らしく、女の子の方が大人っぽい。愛之助は声もしゃべり方も十代の男の子風。声だけ聞いていたいような気持にもなったが、せっかく顔が見えるのにもったいないから、時々見た。朗読中は無表情。足の先が時々微妙に動くのは無意識なのだろうか。朝海ひかるは裕福な家の小生意気な娘にぴったりだった。アンディーはいつの間にかエール大学の学生になる。成績が良いという伏線はあったが、そんなに利発な感じを受けなかったので、ちょっとびっくりした。 思春期以降の男女のやり取りが面白くて、休憩中は、2人がこれからどうなるのかと後半が楽しみだった。
二幕目では、アンディーは髪型は同じだが黒地のピンストライプのスーツに革靴、白いシャツに赤いネクタイ、と大人になった。メリッサもイタリア風(?)のワンピースに大きなイヤリングと大人っぽい。愛之助は足の組み方を逆にし、声も大人の声になった。
愛之助の、ちょっと古臭い雰囲気が、この物語の時代とアンディの性格に合っていたと思う。二幕目は初めからずっと話に引き込まれて聞き入っていたが、特に最後の手紙は愛之助の芝居のうまさが光って、この時だけは表情も思いっきり悲しげになり、ステージも客席も盛り上がった。
朝海ひかるは「きれいなおねえさん」で金持ち娘で芸術家のメリッサにぴったりだった。朗読も安定してうまいので声優かと思ったら、宝塚の人だった。「派遣のオスカル」に出てた女優さんだ。
愛之助と朝海はアンディとメリッサと同じく同い年で、良い組み合わせだったと思う。好きな役者がラブ・レターを読むのを聞けて幸せだった。
最後の方は鼻をすすりあげる音が聞こえ、朝海も最後の方の台詞では少し涙ぐんでいるようだった。終わったときは愛之助も朝海も悲しそうな顔のまま、大きな拍手に包まれた。2人で引っ込んだ後、笑顔で戻ってきてお時儀をし腕を組んで引っ込んだが、また拍手に呼ばれて現れた。
朗読を聞いているうちに、もう一度内容を反芻したくなったので、休憩のときにロビーで原作本を買った。最後まで聞くと、始めの方に聞き流した手紙の内容が意味を持ってくるのだということが、本を読んでわかった。
朗読を聞いた直後は、成功した男が昔愛した女を思い出して一時的に感傷的になっているだけの話か、所詮は男の書いたラブ・ストーリー、と片づけてしまいそうになった。しかし、考えてみると、これも一つの男女の愛のあり方なのか。この話からは、恋物語というより、人生とか運命というものを強く感じる。2人とも、自分のあるべき人生を生きた。
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