7月歌舞伎鑑賞教室「身替座禅」
2010-07-04


2010年7月4日 国立劇場大劇場 午前11時開演 1階10列24番

「歌舞伎のみかた」

幕開きはまた廻り舞台とせりかと思ったら、スクリーンがあって、「七月歌舞伎鑑賞教室」のようなタイトルの後、壱太郎と隼人の写真、2人が携帯でしゃべっている様子、2人が国立劇場に向かって歩いている様子、入り口を入って鏡獅子の像の前で会い、客席に入ってくる様子が映った。すると、客席の後から声がして、壱太郎が上手通路、隼人が下手通路を歩いて舞台の下まで行った。そこで客席に向き直り、壱太郎、隼人の順に名を名乗った。2人とも良い声だ。

その後、なんと隼人が、私の前の空いている(と思っていた)席に、短い間だが座った。座る前に、優しげな目で私の方を見たような気がした。隼人の髪が、ほっそりした肩が、私の手の届くところにあった。

先月と同じように廻り舞台、上手下手、黒御簾、花道、すっぽん等の説明があった。解説の中心は壱太郎。隼人はアシスタント的に、壱太郎とのやり取りで話を進めたり、フットワーク軽くせりに乗ったり黒御簾の前をはずす大道具さんを呼びにいったり。壱太郎は話し方がしっかりしている。すっぽんの上がり下がりで、一人が上がって一人が下がるのを同時にやるのは初めて見た。

先月より下の年齢を対象にするからなのか、「歌舞伎の歴史」の説明があった。出雲の阿国が歌舞伎を始めて、最初は女が演じていたが風紀を乱すとして禁止され、次に若衆歌舞伎になったがこれも風紀を乱すとして禁止された。(要するに性的な対象になるものが禁止されたわけか)
若衆歌舞伎は、16歳の隼人君よりももう少し若い子達が演じていた、という壱太郎の言葉に、「今のジュニーズジュニアみたいなものですね」と隼人。成人男子の歌舞伎だけが許されることになり、その結果、女方が誕生することになった。そのあたりで隼人が下手に消えたので、女形の格好でもして出てくるのかと思ったら、スクリーンに隼人が映った。身替座禅の侍女の拵えをしなければいけないから楽屋に戻った、という設定で、浴衣を着ていた。じゃあ、僕もそっちへ行くから、と言って壱太郎も舞台からいなくなった。

壱太郎がスクリーンに登場し、隼人が女形の顔をすることになった。最初に鬢付け油を塗る。眉毛も鬢付け油で塗りつぶす。その後、首も顔も白く塗り、眉も塗りつぶす。筆で眉を描くときは自分の眉より少し上に描くとバランスが良いのだそうだ。目じりを赤くして、目から頬にかけてピンクっぽくする。そして小さい口を描く。終始真剣な顔でやっていた。
顔が出来上がって、「可愛くなったでしょ」と壱太郎は言うのだが、隼人の女形の顔は、微妙。

「身替座禅」

錦之助はおおらかな雰囲気の右京だ。普通の侍の拵えの方が錦之助の美貌は引き立つと思うが、右京の衣装もまあまあ似合う。「会いたい会いたい」「やれ嬉しや」「いてくるぞよ〜」のような台詞も、感情がこもって聞こえる。花子との逢瀬の後、戻ってきた花道で、思い出し笑いをするのは、まあまあ良い。太郎冠者に花子との逢瀬を語るところの踊りが苦しい。私が観た中では団十郎の次に下手。動きが重い。踊りのうまい人の右京では、ここが一番盛り上がるところだが。去年観た亀治郎なんか、右京のニンではないのに、ここの踊りで盛り上がる。錦之助は踊りがうまくないとしても、どうにか自分の味で見せられるように頑張るべきだ。とりあえず、少し体重を落とした方が良いかもしれない。若造でも爺でもなく、「浮気適齢期」の役者としては一番の二枚目なのだから頑張ってほしい。

彦三郎の玉の井は、出て来ただけで右京が浮気したくなる理由が納得できる、可愛さのかけらもない怖い奥方だった。動きが少し不自由な感じがするのも怖さの盛り上げに一役買っていたかもしれない。

亀三郎の太郎冠者は台詞も動きも良いが、右京や玉の井よりも身分が低い感じがあまりしない。


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[歌舞伎]

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