2013-03-15
2013年3月13日 ル テアトル銀座 午後5時開演 9列21番
「夏祭浪花鑑」
松之助、當十郎、仁三郎、松十郎の上方勢が出ているので、上方の雰囲気を出す助けになっているかもしれない。
磯之丞の種之助は和事を一生懸命勉強している、という感じだが、努力は買う。声にまだ子供っぽさが残る。
琴浦の米吉は、もっと傾城らしさが欲しい。うまいので、もう一段上を期待してしまう。
徳兵衛の亀鶴は安定しているが、海老蔵相手だとちょっと地味すぎるような気がしないでもない。床几の座り方がちゃんとしていた。獅童の徳兵衛が床几に腰かけているときに足がブルブルしていたのは座り方がわからなかったのだとしか思えない。獅童は、海老蔵の団七といっしょに花道から出てくる時が華やかで良かったが。
団七の海老蔵は、前回より落ち着いた感じがする。
長町裏の場で義平次を殺した後に見せるさまざまな所作は、踊りのうまい人がやるのを見たい。海老蔵は義平次の死骸の上で跳んで向き直ったりする動作があまり美しくない。 いつまでも自分自身の美しさにばかり頼っていてはいけないんじゃないだろうか。
義平次の新蔵は、底辺の人間にしては声から受ける感じが立派すぎる。
団七が踊りながら下手通路を上っていくが、そこで最後ではなく、舞台に徳兵衛が現れ、団七の草履を手にして考え込む様子。
この後、大詰の捕物の場。千次郎などが捕手の役で出ていて、屋根の上のとんぼ等で活躍する。
「口上」
勘三郎にアリゾナで稽古してもらった話、その時に(きょう客席で写真をとっている)篠山紀信に写真をとってもらった話や、父団十郎の思い出話をした。
団十郎が歯ブラシにもエルメスの手帳にも「夏雄」とシールを張っていたのは可愛らしいとか、海老蔵は勘三郎のことを「のりあきさん」と呼ぶんだな、とか思いながら聞いた。
二人の人となりが偲ばれる話で、楽しいので逆にほろっとする。きょうの演目の中で一番感動した。
「高坏」
身体を斜め後ろに反らせて後ろを見るところなど、勘三郎に習ったんだと思わせる部分はあった。
海老蔵は美しいが勘三郎のような愛嬌があるタイプではないので、見ていてあんまり楽しくない。タップもうまくないし、この演目は海老蔵に向かない。
プログラムの上演記録を見ると、たぶん平成3年の歌舞伎座で、勘九郎の次郎冠者を観た。途中で片方の下駄の歯が欠けて一本になり、勘九郎は足を上げて客席に一本歯を見せて笑ったりしながら踊っていた。
夏祭も高坏も、勘三郎はうまかったなあと思い出させてくれて、見事なトリビュート。
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