第11回蓼科高原映画祭 「宮城野」
2008-11-01


2008年10月31日 午後六時半〜 新星劇場

上映時間113分なので今考えると余裕で最後のスーパーあずさに間に合ったのだが、不安だったので最後の10分を見ないで出てきてしまった。だから最後にどうなったかはわからないが、映画の出来はとても良くて満足した。

鞠谷友子はあまり好きではないが、いい具合に老けたのが年増女郎の宮城野役に合い、悪くはなかった。

愛之助の役は宮城野のなじみ客のやたろう。最初の方に、大したことはないがベッドシーンもある。やたろうは元々は美人画を描いていたが、うだつが上がらず、今は写楽(國村隼)のところで写楽の偽絵を描いている。偽絵の腕は良いが、自分の線で描いた宮城野の絵には全く魅力がない、というよくあるパターン。

愛之助の出番は予想より多かった。端正だが派手さに欠ける愛之助の顔立ちが、鬱屈した役柄に合っている。この映画は去年の11月、国立劇場の「摂州合邦辻」に出ていたときに撮影していたが、あんなに出番が多いのだったら二つの仕事を併行してこなすのはかなり重労働だったはずだ。ファンの目で見ると顔も姿も映像でたっぷり楽しめて嬉しい。私の好きな手の血管もしっかり見える。歩くところ、動くところ、舞台で見覚えのある動きがこの映画の中でも見られる。写楽の孫のかよ(佐津川愛美)と神社の境内にいるときの照れたようなかしこまったような実直ぶった動きも見覚えがある。襷掛けして太い腕が見えると魅力的だ。やたろうは江戸弁。与三郎の前にこの映画で江戸弁をしゃべっていたわけだ。

山崎達璽監督の映画は初めて見たが、よく出来ていると思った。屋外の背景が歌舞伎のように書割だったり、ときおり紙製の模型が出てそこを紙人形が黒衣に動かされて動く。黒衣の使い方がとても印象的だ。座敷で三味線を弾いたり、駕籠の前後を数人の黒衣が行列していたりと、歌舞伎とは違う使い方だ。この映画の画面全体が暗めなので、黒衣が出ても浮いた感じがしない。写楽の部屋を出ようとするやたろうの後ろから掛ける写楽の言葉がこの映画の中で重要な意味を持っているが、それを聞いた後の、下の方から撮った愛之助の顔の表情が面白い。演技で、というより、愛之助はあんな顔で写真に写っているときがあるので、やたろうの胸中の変化を表そうとして監督が使ったのかと思う。

「宮城野」という話自体よりもこの映画の作りに感動した。

[宮城野]

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